
ラズパイピコで電子工作を始めてから、今度はArduinoというものも触りたくなってしまった。
800円ほどで手軽に購入できるラズパイピコと違って、Arduinoは通常3500円ぐらいするので手が伸びづらい。
ところが色々調べると、Arduinoには性能も挙動もまったく同じ「互換品」というものが存在し、タイミング良く1000円未満で入手できました。
色々ややこしいんだけど、Arduino本体は設計がオープンになっていて商用利用も認められている一方で、互換品が『Arduino』という名前を使うことは認められていないらしい。
つまり、Arduinoを名乗れるのは本家の正規品のみである一方で、名前は全然違っても見た目も中身も全く同じコピー商品が安く出回っているということです。
互換品の中には「貧乏でいいの」とかいうキワどい名前のコピー商品もありますが、決して非合法のパチモノではなくて、ルールに沿って販売されている(合法)とご理解ください。
初心者がArduino UNOの互換品を選ぶ場合に注意したいこと

最近は半導体不足と物価高と円安のトリプルパンチで値上がり傾向が続いているようですが、概ね1500円ほど出せば無難な互換品を選択できそうな気配です。
ガチの初心者は「Arduino Uno」もしくはその互換品を選択しましょう。
ネットの情報の多くはUnoをベースにして解説されているので、MiniだのNanoだのに興味を持つのは最低限の知識を得てからにした方が無難と思われます。

ここで注意していただきたいのが、初心者が互換品を選択するなら余計な機能を追加していないものを選んだほうが無難ということです。
機能の追加に伴って、内部的に正規品とは違う構造にアレンジされている場合があるからです。
自分の購入した互換品(seeeduino crypto)はまさにそれで、高速暗号化機能なるものが追加されているために、通信関連のプログラムを動かすのに微妙な違いがあって苦労しました。
(おそらく1000円未満で投げ売りされていた理由はこういうところにあったのだろう)
初心者がArduino互換品を選ぶ際には『安い!』『オリジナルと一緒!』等といったように、無難なキャッチコピーを記載しているものを選びましょう。
「超高速!暗号化チップ搭載!」とか「ストレージ機能を新たに装備!」みたいな商品は玄人向けであり、目に見えない細かいところで配線が変更されている可能性があります。
他にもUSBコネクタの形状が正規品と異なるものも回路の設計に手が加えられている可能性が高いです。(正規品のUSBはtypeBという古い規格です)
これらの上級者向け互換品では、ネットのサンプルプログラムがそのまま動かないこともあり得ますし、なかなか初心者がすぐに原因を突き止めるのは困難だと思われます。
ラズパイピコとArduino、初心者はどちらを選ぶべきか

ネットではやや荒れそうな話題になりますが、ラズパイピコ(Raspberry Pi Pico)とArduinoのどちらが初心者向けと言えるでしょうか?
筆者は1ヶ月前にラズパイピコで電子工作を始めて、最近になってArduinoにも触ってみましたが、どちらも一長一短であると感じています。
・ はんだ付けが不要で、動かしたい部品さえあればすぐに試せる。
・ ネットも書籍も情報が充実している。
・ プログラミング言語はC++。(ラズパイピコはPython)
・ 実用的な工作では、別のチップにプログラムをコピーして使うのが一般的。
Arduinoはピンを抜き差しするコネクタが装着されているので、LED等を接続してすぐに動作を試すことができます。(いわゆるLチカ)
さらに10年以上の歴史があるため、ネットや書籍も情報が多く、学習用のパーツセット等もamazon等で販売されています。
電子工作という行為を体験したいのであれば、Arduinoは学習用途としてスタートのハードルが低いので、工業高校等の授業でも多く採用されているようです。
一方で上の画像を見てもらうとわかるように、本体の大きさがラズパイピコよりも大きく、Arduino本体を組み込んで工作物を完成させるのは現実的ではありません。
Arduino本体はあくまで学習と検証に優れており、工作物の部品(基盤)として使うのはあまり一般的ではないということです。(モータ付きロボットのような大きなモノを作る場合は別)
Arduinoで実用的なモノを作るなら、最後はマイコンが必要になる

Arduinoで電子工作を学習して、いよいよ何か工作物を完成させようとするのであれば、別のマイコン(ICチップ)を使うのが一般的です。
値段と大きさはチップの性能によって異なり、通販なら100円から500円程度の範囲で手軽に購入できます。
Arduino本体を使ってプログラム作成から動作確認まで行い、最後の仕上げ段階でマイコンチップにプログラムをコピーして動かします。
この段階でぶつかる問題として、「どのチップを選ぶべきか?」と悩んでしまったり、微妙にArduino本体と異なる挙動を示して対応が必要になることも考えられます。
スタートの敷居が低いArduinoでしたが、工作物の材料として考えたときにラズパイピコよりも一手間かかる印象を受けます。
このあたりの話について『Arduinoはマイコンでも動かせるから良い』と考えるか、『Arduino本体はパーツとして使いづらい』と考えるかは人によると思います。
初心者が自作のUSB機器などを手っ取り早く完成させたい場合などは、そのまま部品として組み込めるラズパイピコの方が使いやすいと感じるかもしれません。(少なくとも自分はそうでした)
Arduino vs ラズパイピコ(Raspberry Pi Pico)

電子工作の初心者がArduinoとラズパイピコのどちらを選ぶか悩んだとき、なにを目標にしているかによって答えは変わってきます。
ここまで説明したように電子工作という行為そのものを体験したいのであれば、学習用の教材が充実していて敷居の低いArduinoがおすすめになります。
その際には解説書付きのキットセット等も購入しておくと、いちいち学習のために必要な部品を調達しなくて良くなり、ある程度のところまでは学習が継続しやすいと思われます。

では、ラズパイピコを選ぶべき人はどのような人物でしょうか。
ズバリ申し上げると「●●を一日も早く完成させたい」と目標が定まっている人は、ラズパイピコの方が向いています。
自分の場合は動画編集用のUSB機器を一日も早く作りたかったので、学習しながら作りたいモノの完成までたどり着けるラズパイピコから始めました。
もちろん、Arduinoでも割と簡単にできる話ではあるのですが、実用段階に入るためには『マイコンで動かす』という部分で初心者はひっかかってしまうと思います。
また、ラズパイピコではpythonというプログラミング言語を使うのが一般的であるため、今まさにホットなpythonを学習したい人には選択する動機の1つとなることでしょう。

ただし、ラズパイピコで用いるpythonは亜流であり、それも「micro python」と「circuit python」の2種類が存在します。
この2つは北斗の拳で言うところの「北斗神拳」と「北斗琉拳」に近く、どちらも源流が北斗であるとはいえ両者の違いは決して小さくありません。
さらにややこしいことに、ラズパイピコをArduinoに書き換えてC++で動かすという「南斗聖拳」まで勢力を拡大しています。
解説サイトによってどちらの流派を紹介しているかはまちまちなので、初心者はこの流派争いに対して困惑してしまうかもしれません。
『電子工作』という行為そのものを学習する環境として見たとき、ラズパイピコはまだまだ無法の荒野に近いのが実情となっています。
さあ電子工作を始めよう!初期投資は最低1万円を推奨

これから電子工作という沼に足を踏み入れようとしているみなさんは、このコラムを何度も読み解きながら進むべき道を選択してください。
結局のところ、どのような道を歩んでも行き着く先は魔界です。
筆者はまだ魔界の入り口に立ったばかりですが、すでに顔全体に血管が浮かび上がり、口からは紫色の煙が出るようになりました。
最後にもう一言だけ付け足させてもらうと、初期投資はケチらずに一気に買い揃えることをおすすめしたいです。
基盤本体だけあってもなんにもならないのが電子工作ですので、必要と思うパーツ類は最初から買い揃えて、それらを活用することを目標にしてがんばると良いでしょう。
せめてブレッドボード数枚とジャンパー線、それにLEDと抵抗とスイッチ類ぐらいは揃えておきたいところです。
予算としては1万円程度は見積もっておくと安心で、それだけあれば学習に必要なパーツ類に加えて、ハンダゴテや収納ケースなどの購入も射程圏になってきます。
特に通販で必要なものを買おうとすると送料がいちいちかかってしまうため、ある程度まとめて欲しいものを揃えてしまった方がお得です。買えば買うほどお得なんです。買っちゃえよ。